猫の気持ち 其の一


「ところで満毒斎君、何かお探し物じゃなかったのかい?」
「おっと、そうでござった。実はその件なんでござるがね、新しい飼い主を探しているところなんでござるよ。心当たりがあれば紹介してもらえると助かるでござる」
「お任せくだせぇ、ダンナ。人探しでも嫁探しでも何でも承りますぜ、どんな人材がご希望でござんしょ」
「うむ、とりあえず金髪碧眼美女がご所望だね、眼鏡はオプションでもかまわんよ。あと、山羊臭いのと赤毛はダメだ」
「は、ハードル高けぇっすな! ダンナ」
 うん、何でもおまかせあれと言われたので、とりあえず思い付いた条件を並べてみただけなのであるが。こう返されてしまうと何だか吾輩の方が高望みをしているように思えて来て申し訳ない気分になってしまう。
「しかし、それだけの高条件なら逆に絞込みの手間が省けるってもんじゃないかね、ハッハッハ。この辺りではあの子しかないんじゃないかな」
「でヤンスな。まさにピッタリの子が一人居ますぜ、ダンナ」
「お、さっそく心当たりがあるでござるか」
 こいつは有難いことである。まさかこんなに早く見つかってしまうとはなかなか運が良い。二、三日は野宿も覚悟していたのであるが、どうやら回避出来そうな予感がしてきた。
「ここからちっとばかし距離がありますがね。なに、ダンナの足なら一っ飛びでございましょう。迷子にならないようによく聞いてくださいな、よござんすか。まず、この通りをずっと真っ直ぐ歩いて行ってもらって、幹線道路に出たら左に曲がってくだせえ。そしたらそのまま信号を二つほど進んでもらって、ガソリンスタンドが見えてきたらそこの角をまた左に入りやす」
「えっと、幹線道路へ出たら左へ曲がって、ガソリンスタンドの角をまた左でござるな」
「へい、そっから先がちょいと入り組んでいて分かりにくいんでござんすが。交差点を三つほど進んだ先に探偵事務所があるんでさぁ。そこで助手をやっている子がダンナのリクエストにピッタリの女の子でヤンスよ」
「た、探偵助手でござるか」
「へい、雑居ビルが入り組んでいて分かりにくい所にあるんで、もし事務所が見つからないようならそこでまた尋ねてみてくだせえ」
「うーむ、何だかロマンスの予感がしてくるねえ」
「ま、細かいことはダンナ自身で調べてもらうことにして。急いだ方がいいですぜ、今日はこれから一雨降るって天気予報で言ってましたから」
 たしかに、アーケードの屋根があるせいで気付きにくいが、目的地の方を見上げてみると、どんよりと薄暗い雲が掛かり始めている。
「なるほど、雨に濡れるのは剣呑だね。降り始める前になんとか潜り込んでみることにしようか」
「上手くいったら、また今度じっくりと話を聞かせてほしいでヤンスよ」
「そうさせてもらう事にするよ、わざわざかたじけないね」
「なに、礼には及びません。困った時はおたがい様、孫して得を取れってやつです。共に手を取り合い、世界制服に挑むでヤンスよ」
「うむ、是非ともそうしたいね、我ら猫又族の勝利のために。では、これにて失敬」
 ヤス君とロン君にお礼を言ってから、さっそく目的の探偵事務所へと向かうことにした。今度こそは理想の主のもとで猫又生活を愉しませてもらうことにしようかのう。
 駆け足ぎみにアーケードを抜け、真っ直ぐ突き進む。
 まだ見ぬ新しい主の元へと向かって……。

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