猫の気持ち 其の一


 吾輩は旅をしている。新しい主との出会いを求めて、美里町を探索しているところであ~る。

 それほど長く住んでいる町では無いので、こうしてあちこちを歩き回っているだけでも新しい発見が次から次へと現れてなかなか面白いものである。
 できるだけ早く新しい主を見つけてのんびりと猫又生活を満喫したいところではあるが、お目当ての美女とめぐり合うのはそう簡単でも無さそうだ。なに、見つからなかった時はそ知らぬ顔をしてアラン君のレストランにでもしばらくご厄介になれば良かろうと、存外呑気に希望的観測を抱きながら人探しをしているところである。
 ちょいと二日酔いでフラフラする足取りをなんとか踏ん張らせながら、とりあえず人だかりの多そうな商店街の方へと向かうことにしよう。
 猫を飼いたいと思っている人と出会うのはそう簡単なことではないであろうことは吾輩も十分に承知しているつもりだ。確かに、猫は人気のあるペットである。ニャアニャア猫なで声を上げながら近付いて行けば、たいていの人は可愛がってくれるであろう、子供から老人までお手のものだ。しかし、問題となるのはここから先の段取りである。
 多くの場合、一通りあやしてくれたあと、「またね、バイバイ」とそのまま置き去りにされてしまう。そのまま家へとお持ち帰りしてくれる輩は中々いない。吾輩自身が猫になる前は、そのような不人情な振る舞いをしておったのであるからして、猫になったからと言ってホモ・サピエンス族に対度を改めよと申し開きを立てるのはちょいと不義理であると言わざるを得ない。
 と言うわけで、手当たりしだいで通りすがりの人に愛嬌を振り撒くのはやめておくことにする。やはり猫らしく自然体であることが最も合理的であると言う結論に達するのだ。
 こうして、哲学的な思索に耽りながら当てもなく街の中をウロウロと徘徊しているわけであるが、改めて猫と言うものは決して万能な存在では無いことに気付かされてしまった。観測者としては確かに優秀な存在かもしれないが、一線を越えて懐の奥まで入り込むには大変な熟慮を必要とする。お目当ての女の子を口説き落す過程とよく似ていると言っても差し支えない、もうちょっと真面目にナンパの練習をやっておけば良かったかもしれないにゃあ。
 しかしながら、いまさら悔やんだところで仕方がないし、猫になったのなら猫なりのやり方と言うのもあるだろう。餅は餅屋にまかせろと言う考え方がある。この世界には沢山の猫好きが存在しているのであるから、それに答えるだけの猫も多数存在するのが宇宙のしくみである。したがってこの街にも沢山の猫が存在するはずだ、ならば猫に直接聞いて回るのが一番手っ取り早い。きっと猫を飼いたいと思っている人物を知っているはことであろう。
 以上の結論に達したならば、吾輩が次に取るべき行動は自動的に決定される。まずはこの町の住人を良く知っている猫を探し出すことから始めることにしたそう。

“猫の気持ち 其の一” への2件の返信

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