猫の気持ち 其の六

「マックパワー!」


 裂帛の気合とともに重力の枷を振り切った身体が一気に跳躍を開始する。位置エネルギーが最大になった所でアランの顔とドアノブが水平に並び、ガチリと両の手でドアノブに取り付いた。そのまま振り子のように身体を揺らしドアノブをこじる、器用なものだ。
 しばらくその様子を眺めていると、ガチャリと音がして猫の重みでドアがコチラに向かって開き始めた。
 勝手口が半分ほど開いたところで、アランが身を翻しながら地面に着地したと思いきや、一目散にレストランの中へと飛び込んでいった。
 どうやら成功したようではある。とは言ったもののドアの向こうは真暗、今日は定休日なので明かりなど点いていないのは当たり前であるが、どうするつもりなのであろうか。中の冷蔵庫から何か取って来るつもりかしらん、さすがに業務用冷蔵庫を猫が開けるのは無理であろうし、勝手口に鍵が掛かっていないと言うのも気になるにゃあ。吾輩の頭の中でまたもや探偵の血が疼いて来た。
 皆で真暗な闇の中をしばらく見詰めていると、突如として巻き起こった旋風が空き地の雑草を撫で付けながらレストランの方へ進んで行くのが目に入った。
 これはマズいぞと思った次の瞬間には、地鳴りのような音と共に勝手口のドアが叩き付けられる。
「おや、閉じ込められちゃったねえ」
 返事をする者は無い。
 四匹の猫が勝手口を見据え続けるなか、空き地には秋の訪れを知らせる風と沈黙が流れ続けている。

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