猫の気持ち 其の二


吾輩は異世界転生した。ここが何処であるのかとんと見当がつかぬ。
とあるアパートの一室を徘徊しながら捜査を続けているところだ。
お世辞にも広いとは言い難い、リビングはじつに殺風景なもので、特に吾輩の気を引くような物は無いように思われる。ベランダと反対の方角は真っ直ぐに廊下が続いており、玄関が丸見えだ。まずはこちらから調べてみることにしよう。
廊下へ入ると左手にキッチン、その先に左右1つずつ扉がある。片方は小さな光窓が付いているのでおそらくトイレであろう、中に人は入っていないようだ。もう片方はありがたいことに開け放しにしてある、開ける手間が省けて大変ありがたい、さっそく奥を覗いてみると洗濯機が置いてある。どうやら風呂場のようであるな、こちらも人影はないようだ。
さてと、踵を返して一旦リビングの方へと戻ることにしよう。
廊下から戻り左手を向くと東側の壁に大きな引き戸がひとつ、おそらくは寝室であろうが残る部屋はココだけだ。
少々骨が折れる大きさであるがここまで来たからには秘密の花園を覗かぬわけにはいくまい、まずはきっかけ作りのために爪を引っ掛け揺さぶりをかける。
しばらくジャブを続けていると、かろうじて脚が入るくらいの僅かな隙間が出来た。
よしよし、良い感じだ。
お次は出来上がった隙間に両前足を突っ込み、やさしく中をかき回す。
するとどうだ、今度はゲンコツくらいの大きさまで拡がった、ここまで来ればもうこちらのものである。
「ちぇぇストォー」
気合と共に頭を突っ込み、体全体を使って隙間の中へ中へと押し込んでいく。
これが映画などであれば、さぞかし無様な格好を晒して物笑いの種になるのであろうが、幸いなことにココは妄想ポエムの世界であるから誰にも見られる心配はない。
肩のあたりまでねじ込むと、あとはスルリと抜け出ることが出来た。