猫の気持ち 其の三


 ――時は満たされた。


 吾輩は完璧な観測者になるべく世界各国の猫資料館へ赴き、さっそく探究を開始する。
 やはり、猫の神秘的な魅力は世界各国の知識人を虜にしてしまうようで、そこに待ち受けていたのは予想以上の膨大な情報源であった。歴史資料や文献はもちろんのこと、絵画や彫刻、文芸書などの芸術作品、はたまた宗教や哲学、科学の領域にいたるまで。
 もはやこの惑星は猫に占領されてしまったのではないかと錯覚すら覚える量であったが、これしきのことで立ち止まるわけにはいかにゃい。目を皿のようにして資料と格闘する日々が長く続いた。
 地球上では幾度も季節の花が咲き、枯れては次の季節の花へと移り変わってゆく。ぐるりと地球が一周してくればまたその繰り返しであるが、その模様は必ずしも同一な絵柄になるとは限らない。暑い夏もあれば涼しい夏もあるだろう。豊かな色彩と模様で無限に移り変わってゆく万華鏡のようなもので、似たような絵柄は一定の確率で出現するものの毛穴の数まで完全に一致するとは限らないのである。
 自称この惑星の支配者を吹聴している猿人類も似たようなもので、文化や科学技術の発達によって多少なりとも様式に変化が見られることがあるものの、カツラを取り替えただけの戦争屋が世界平和を叫びながら喝上げを繰り返す滑稽劇場が定番の見世物になっているようだ。
 このやうな野蛮猿に付き合わされるのも辟易としていたので生暖かい目で見守りながら放っておくことにして、猫と女体の神秘について研究を続けていたところ。我らの仲間を猫鍋にして食べようとしたり、偵察用のスパイに仕立て上げてみたりと、増長して迫害を加えて来るようになったので爆弾の作り方を教えて破滅寸前まで追い込んでやったこともある。――おかげで吾輩の貴重な研究資料まで焚書されてしまうところであった。
 それでも地球は回り続け、長い年月を旅したのち平和と言う名の倦怠期を迎えることになる。
 滑稽劇場は相変わらずで、猫眷属に危害を加える蛮族も未だにウロついているようであるが、象牙の塔に引き篭もっているのも飽きてきたところなので、そろそろ下界に降りて活動を開始しようかと思案していた矢先のことであった。
 とある団体から一通の連絡が入ったのである。

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